bronson69の日記

いつか読み返して楽しむための文章。

万事快調

「働いて働いてまた働く、仕事より楽しいのはまた仕事」と歌ったのは真島昌利で、「仕事ばかりで遊ばない、ジャックは今に気が狂う」とはキューブリックの「シャイニング」に出てくる一節。そんでもってほんとに仕事ばっかで狂いそうな感じに仕上がってるのが俺。狂いそうってもストレスとフラストレーション溜め込んでウワー!ってなってショットガンをぶっ放しちゃうやつではなくて、もっと静かなやつ、致命的なチューニングのズレを、どこか噛み合わない歯車を抱えたまま平穏で単調な日常生活をおくってしまうような、そういうやつ。そもそもこんなに仕事ばっかして気が狂わないほうがおかしい。そんなの狂ってる。

帳尻を合わせなければならない。冷凍庫からハーゲンダッツのラムレーズンのパイントを取り出す。大きなスプーンを直接つっこみ、口に運ぶ。冷えたスプーンの凍るような感触。治療中の奥歯に疼痛が走る。戸棚を開け、グラスにウイスキーを注ぎ、舐めるように飲む。ピチカート・ファイヴの「ベリッシマ」を再生する。退屈と諦念に身体を浸す。仕事ばかりしていると、知らず知らず仕事のペースに巻きこまれてしまう。仕事ばっかで遊ばない、それで平気になってしまう。まるで恋をするように、夢中になって仕事をする羽目になる。なんて恐ろしいことだろう。きちんとやさぐれなければいけない。仕事ばかりで遊ばないのなら、ちゃんと狂わなければいけない。そうでないと、湧きあがる退屈の音が聞こえなくなってしまう。これは恋ではなくってただの仕事。そういうふうでなくてはいけない。分をわきまえなければいけない。恋には恋の領分があり、仕事には仕事の了見がある。夜のドライブにも夜の仕事にも終わりが必要である。

 

ウイスキーを二杯ほど飲んだところで外に出る。引き続きピチカートを聴きながら、なんとなく街の方に歩いていく。疲れているのか、歩くたびに歯が響く。痛いまではいかない。ただ響く。早く治療の続きをしたい。そういえば家のシャンプーがなくなった。ベローチェは改装してからいつもたくさんのお客さんで賑わっている。シーシャとリンゴ飴の店にはまだ行っていない。気にはなるけど行っていない。シーシャもリンゴ飴も、そこまで好きでもない。耳の後ろがむず痒い。目も痒い。こんどは何の花粉かそれともPM2.5かおのれ中国め、などと思うがただ伸びた前髪が目に入っているだけだった。そういえばしばらく髪を切っていない。フリッパーズの髪を切るさバスルームでひとりきり大暴れ、ってあの歌詞、ひとりきりってことはセルフカットしてるのだろうか。裸でセルフカットで失敗して大暴れしてる歌なのだろか。セルフカットって、よっぽど自分のセンスに自信がないと出来ないよなー。俺には絶対できない。過去に一度だけもみあげを自分で切ってみたことがあるけれど、最終的に耳たぶまでの長さのオカッパみたいなおかしなヘアスタイルになって絶望した。学校行くのキツかったなあ。そういえば、中学校くらいのころ、散髪のたびに変な髪型に仕上げられていた時期があった。教室に入った瞬間ドッと笑いがおきるくらいに変な髪型。いま思えばさっさと店を変えるべきだったのだけど、美容師さんがやたらと自信満々なひとで、これは変なのでは…?と言い出せなかった。自分の感覚が間違えてるのか?セットがきちんと出来ない自分が悪いのか?と思ってしまい、しばらく通い続けてしまった。あれは間違った選択だった。道の対面に世界の山ちゃんが見える。世界の山ちゃんには行ったことがない。だから何が世界なのかわかっていない。メニューも内装も丸パクリの店を「平行世界のやまちゃん」って名前で出したら怒られるだろうか。あり得た可能性としてのやまちゃん。やまちゃんis誰。そういえばこの世界の山田はあまねく山ちゃんってあだ名で呼ばれるものだと思っていたけれど、山田邦子はクニちゃんなんだな。あだ名の由来になりやすさ、山田と邦子だと邦子が勝つ。こんな感じで苗字と名前でトーナメントやったら最終的にはどんな苗字と名前が残るんだろう。奇抜な感じになるのか、シンプルになるのか。奇抜だからってあだ名の由来になるわけでもない。五所川原さんって苗字のひと、ゴショちゃんとかごっしょんとか呼ばれないよねきっと。シャンプーを切らしているのでシャンプーを買わなくてはいけない。らんま1/2のシャンプーの歌がめちゃくちゃ可愛くて一時期すげー好きだった。猫飯店メニューソング。でもシャンプーは何か好きになれなかったなー。あかねとらんまのカップルが好きでした。らんまの最終回とうる星やつらの最終回はたぶん永遠に好きだと思う。あたるの「今際のきわに言ってやる!」より素敵な愛の告白はあるのだろうか。そうだドコモショップにも行かなくては。ちょうど二年縛りの更新月なのだ。こんどはMVNOにしようと思っている。MVNOとはなんの略なのだろう。モバイルバーチャルニューラルオーガニゼーションだったらかっこいいな。仮想移動体神経機関。いい。攻殻機動隊の世界観だ。情報のすべては一枚のsimカードにダウンロードされていて、チップを差し替えるだけでどのスマホでもお使いいただけます。あれ。普通だ。普通のMVNOだ。攻殻機動隊どこいった。シャンプーだ。シャンプーを切らしているので買わなくては。ミントのやつがいい。夏だから。さっぱりしたい。夏だから。

 

それからボタニストのシャンプーを買い、煮干しラーメンを食べて帰宅。なんとなく腕立て伏せをし、ナカゴーとままごとのチケットを予約し、頭を洗い、ミントの香りに包まれてウイスキーを飲みつつこれを書いている。ああ、ミント・ジュレップを飲みたいな。それか美味しいジンでもいいな。でも飲みに行くの面倒くさいな。ああ。