bronson69の日記

いつか読み返して楽しむための文章。

日記

東京に帰る新幹線はUターンラッシュで混雑しており、きっちり満席になっていた。我々の席は車両の端から3列目、座席に座るとデッキのほうから「キャアアアアア!キャアアアアア!」と甲高い悲鳴のような鳴き声が聴こえてくる。怯えた犬でもいるのかしらと目線をやるとどうやら犬ではなく赤ん坊が泣いているようで、それも悲鳴を上げているのではなくふつうにむずがって泣いている様子。シンプルにとてもとても声が高い赤ちゃんが泣いているらしい。声変わりしてやっとクロちゃんくらいの声の高さになりそうな赤ちゃん。ウィーン赤ちゃん合唱団。

しばらく赤ちゃんのかわいいソプラノヴォイスを堪能していると、後ろからも「キャアアアアア!」が聴こえてきた。赤ちゃんとは音叉のように共鳴するものだったのか?と振り返ってみると、こちらは赤ちゃんではなく小型犬のようで、斜め後ろの席の男性の膝の上の黒い籠の中から聴こえてくるのだった。ちいさくてかわいいものたちは発声の波形も似てくるらしい。そこからしばらく妻とふたりで「この声は犬か赤子か」を当てっこし、ほんわかと眠くなってきたところで妻は耳栓を、僕はイヤホンを装着した。新幹線はちょうど仙台を過ぎたところで、東京まではあと一時間くらいかかるようだった。