bronson69の日記

いつか読み返して楽しむための文章。

100パーセントの夢の話

三連休の最終日。
外は晴れていたのに、やたらと眠くて、眠ってばかりいた。
録画していた映画を見ようとするけど、少しするとすぐ眠ってしまう。
本を読もうとしても眠ってしまう。
眠ってしまって、30分もしないうちに目が覚める。
ショートスリープの繰り返し。
そんな一日だった。

何度目の昼寝か、それもわからなくなった夕方、きょう初めて、夢を見た。

夢の中でも、僕は昼寝していた。
きょうよりももう少し暖かい春の日だった。
東京に古くから住んでいるおばあちゃんの家みたいな、六人暮らせる昭和な感じの家に、僕はひとりで住んでいた。
一階の、庭に面した大きな窓がある居間で、オレンジ色の西陽を浴びながら、僕はうつ伏せになって眠っていた。

ふいに、ガラガラと玄関を開ける音がした。
僕はそのまま眠っていた。
眠っているのに音に気づく、というのはおかしなことだけれど、夢だから仕方ない。
ミシミシと床がふるえる気配で、誰かが家に入ってきたのがわかった。
訪ねてくるひとに心当たりはなかった。
誰かが入ってきたというのに、家の空気にはなんの緊張感もなく、ただ春の夕暮れの暖かさだけがぼんやりと漂っていた。
誰かが居間に近づいてくる。
僕はまだ眠っている。
起きようとすればいつだって起きれる。
だって夢だから。
でも夢の中の僕は起きようとしない。
近づいてくる誰かに見つけてもらうのを待っている。
それをとても素敵なことだと思っている。
気配がどんどん近づいてきて、うつ伏せの背中に手が伸びて、そしてー。

僕は目を覚ました。
現実の僕は、二人がけの青いソファで、体を小さく折りたたむようにして眠っていた。
再生してた映画はとっくに終わって、テレビにはHDDの選択画面が映し出されていた。
毛布も何もかけていなかったから、体はとても冷えていた。
部屋には誰もいなかった。

あれは誰だったのだろう。
夢の中で、夢から覚めずに目を覚ますことができたら、あれが誰だかわかったのだろうか。
でも、そんなことってできるのだろうか。
何度あの夢を繰り返しても、夢の中で目を覚ましたら、僕は目を覚ましてしまうんじゃないだろうか。

ああ、でも、あの夢の中で寝ている時間は、ほんとうに幸福だった。
安心しきって、悪いことも怖いことも何もなくて、ただただ心地よくて。
そのうえ、あの誰かと顔を合わせていたら、僕は夢から帰って来られなくなっていたかもしれない。

春の風にのってヒュっとすべりこんできた、100パーセントの夢の話。