読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

bronson69の日記

いつか読み返して楽しむための文章。

無題

創作

フロアの電気を消して退社する。メシでも食おうかと考えるが、特に食べたいものも思いつかず、そのまま地下鉄に乗る。画面の割れたスマホをそのまま使ってる女はすぐヤれるんだってよ、隣に立つ男たちがそう言ってニヤニヤ笑っている。すぐに地元の駅につく。電車を降り、階段を登って外へ出る。酔っているのか、フラフラと歩く中年女性とすれ違う。すれ違いざまにカバンとカバンがぶつかり、反射的に振り返って頭を下げるけれど、相手の女性はこちらを見もせずに行ってしまう。空気はベタついて重たく、歩いているだけでじんわりと汗がにじむ。終わったはずの夏がまとわりついてくる。晩飯を買いにスーパーへ向かう。初老の男性が、半額シールの貼られた惣菜をカゴいっぱいに詰め込んでいる。さらに半額の寿司をカゴに入れようとして、連れの男性に窘められている。二人は同じくらいの年齢に見える。ひとりは小太りで、ひとりは禿げている。ふたりとも足が悪いようで、少し片足を引きずるようにして歩く。彼らが取り尽くしてしまったのか、弁当の類いはもう残っておらず、何も買わずにスーパーを出る。コンビニに行き、ざる蕎麦を買って家に帰る。マンションの入り口で見たくもない虫を見かける。エレベーターに乗る。ポケットから鍵を取り出し、部屋に入る。湿気った匂いに鼻を鳴らす。シャツを脱ぎ捨て、エアコンを除湿モードで起動する。床に座ってざる蕎麦を食べる。録画したテレビ番組のリストを眺める。見ていない番組ばかりでハードディスクが埋まりそうになっている。口の中で柔らかい蕎麦をモニュモニュと潰しながら、リモコン片手に消す番組をピックアップしていく。ノンフィクションとバラエティを10時間くらい適当に消し、そのままテレビも消す。シャワーを浴びる。汗を流し、肩口に出来た湿疹に軟膏を塗る。季節の変わり目には決まって肌が荒れる。除湿が効いてきた部屋は少しひんやりとしている。電気をつけたままベッドに横たわる。濡れた髪の水分が枕カバーに沁みていく。濡れた枕では横向きには寝れないな、そんなことを考えながら眼を閉じる。思ったより疲れていたのか、眠気はすぐにやってくる。なんとなく、ドロドロの溶鉱炉に仰向けに沈んでいく自分の姿を思い浮かべ、そのまま意識を失っていく。