君にいいことがあるように
2019年はあと2時間で終わり。
テレビの中ではPerfumeがキュベレイみたいな衣装を来てダンスしてる。
僕は座イスに座ってモツ鍋を食べながらそれを見ている。
隣では彼女が毛布にくるまりながらiPadを操り仕事をしている。
部屋の隅に飾られた黄薔薇の花弁が少し黒ずんでいる。
エアコンの風が卓上に置かれたカップケーキの蓋を揺らしている。
概ねが平穏のまま推移している。
今年はずっとaikoの「ストロー」がお気に入りで、気がつくと頭の中で流れていた。3回に1回くらいは鼻歌で、そのまた3回に1回くらいは小声で口ずさんだりしていた。「君にいいことがあるように 今日は赤いストローさしてあげる」という歌詞とメロディが特に好きで、いつもそこばかり繰り返していた。
君にいいことがあるように
今日は赤いストローさしてあげる
君にいいことがあるように
あるように
あるように
当たり前だけど、赤いストローは幸運を齎さない。ストローの色は現実に影響しないし、そういう言い伝えやジンクスも、たぶんない。でもそこには気持ちがある。想いがある。想いをこめてする行為は、どんなものでも祈りに変わる。大げさに言えば魔法、もう少し軽く言えばおまじない。
想いがあれば、ストローをさす行為も祈りに変わる。想いがあれば、なんだっておまじないになる。君にいいことがあるように、きょうは少し肩を押してあげる。君にいいことがあるように、きょうはとらやで羊羹を買っていく。君にいいことがあるように。君にいいことがあるように。あるように。あるように。
一年中、いつだってそう願っている。連日の徹夜仕事に疲れきったあなたが、何かいいことないかなと口にする回数より多く、あなたにいいことがありますように。モヤモヤやため息の時間もそう捨てたものではないと個人的には思うけど、それでも笑顔でいられる時間が少しでも多くなりますように。気持ちよく目覚められる朝が訪れますように。意識のあるあいだずっと、もしかしたら寝ているときも、心のどこかでそう思っている。
年越しそばを食べていたらいつの間にか年が明けていた。いま僕らはハーゲンダッツを食べながら、おもしろ荘と千鳥ちゃんを交互に見ている。どちらかというとおもしろ荘を多めに見ている。2020年はどんな年になるだろうか。どうだろね、見当もつかないね。とにかくいいことがあればいいと思う。僕よりも彼女にいいことがあればいい。願わくば、僕が彼女にとって良いものであったら嬉しい。そんで、年末になって、今年も平穏で良かったと、一緒に過ごせて楽しかったと、そう思えたらとても嬉しい。そういう一年になればいい。
あけましておめでとうございます。
今年も宜しくお願いします。
皆様にいいことがありますように。