bronson69の日記

いつか読み返して楽しむための文章。

無題

この家に越してきてもうすぐ2年になるが、駐輪場の横の木が金木犀であると気がついたのはつい先日のことである。彼女とふたり、遅い時間に帰宅して、なるべく静かに自転車を停めていると、家の鍵を開ける彼女がああこれ金木犀なんだねえ、と言ったのだった。

近寄って匂いをかぐと、それは確かに金木犀だった。家に入って上着を脱いでソファの上に放り投げ、手を洗いながら、金木犀ってあまり好きじゃない、風物詩はぜんぶ好きなほうだけど金木犀は例外、と言うと彼女は、わたしも好きじゃない、世間で持て囃されてるのはおかしいと思う、と応じた。

そもそも匂いが好きじゃない、花もかわいいと思えない、でもトイレの匂いって言われるのは別に金木犀のせいじゃないからちょっと可愛そう、中国では金木犀をお酒に漬け込むらしいけど美味しいのかしらん、各々そんな感じで勝手なことをいいながら、我々は夕食の仕度をした。僕は買ってきた惣菜を温め、箸と皿を出し、食卓に並べた。彼女はいつものようにサラダを作った。彼女は毎日サラダを作る。他のおかずに野菜が含まれているか、おかずの品数は充分か、そういうこととは関係なく、彼女はいつもサラダを作る。

いつもは特に気にしないけれど、なんとなく、きょうは聴いてみることにした。ねえ、なんでそんなにもサラダを作るの。なんでなの、健康とか、そういうこと?

わかんない。理由はわかんない、わかんないけどいつも食べたくなる、食べたくなるから作ってる。それだけ。

え、理由わかんなくないじゃん、食べたくなるから作ってるんでしょ、それって立派な理由なんじゃないの。

そうなの?これって理由になってる?

充分なってるでしょ。

でもこの場合の理由って、いつも食べたくなるのはなんでかっていうそのなんでかの部分なんじゃないの。食べたくなるから食べたくなるってのは、ただのトートロジーで、説明にはなってなくない?

でもさ、食べたくなるってことは、それは欲望でしょ?欲望に理由とか合理性とか、いる?いやもちろんサラダに合理的な理由を説明することもできなくはないだろうけれど、そういうのって後付っていうか、先にあるのは欲望で、理由は後からこじつけてひねり出すみたいなものにしかなんないんじゃないの?

え待って、理由ってそんなこじつけみたいなものばっかじゃなくない?もっと本質みたいな理由もあるよね?例えばわたしの中に過去の抑圧みたいなものがあって、母親との関係とか、むかし好きだった人に言われた一言とか、原発の爆発のきのこ雲の映像とか、なんかわかんないけどそういうものがいまになって日々のサラダ作成として溢れ出してるみたいな、そういう真芯を射抜く的な理由もあるんじゃないの?

それだって結局は後付なのかもよ?ただ後付でこじつけたネタが本質っぽいっていうか自分が深刻にならざるを得ない記憶とかそういうやつだったから本質だなって思ってるだけで、本当にそれが本質なのか、本当にそれがサラダを召喚してるのかなんて、誰にもわかんないじゃん。

わかるよ。自分の欲望だもの。自分のサラダだもの。

わかんないよ。欲望なんて自分のものじゃないんだから。サラダなんて誰のものでもないんだから。

さっきから何いってんの?サラダはわたしのものだよ?わたしが食べたくてわたしが作ったんだから、このサラダはわたしのものだよ?

だからそれでいいじゃんって。食べたくて作って食べる、それだけでいいじゃん。理由とかなくていいじゃん。

は?理由尋いてきたのはそっちでしょ?聞かれたからがんばって答えようとしてんのに、理由なんてなくていいとかさ、いいなら初めから聞かないでよ。

 

この会話は100%すべてがフィクション で、ただスマホの上で指を適当に滑らせていったら生まれた文字列なのだけれど、なんでまたこんなウザったい会話が生み出されたのか、我ながら謎い。ほんと謎だしほんとウザい。あと月曜マジ嫌い。仕事したくない。晩ごはんのごぼう天肉うどんが胃の中で重たい。吐きそう。江古田で見たウンゲツィーファめっちゃ良かったのでそれは嬉しかった。小沢健二楽しみだけどお台場まで行くのめんどくさい。新宿あたりでやってほしい。新宿に大きなライブハウスほしい。踊り場ネタライブのチケット当たって発券したら良席すぎて笑いが出た。胃が気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。