bronson69の日記

いつか読み返して楽しむための文章。

年末っぽくない12月

監獄のお姫さま。毎週楽しみに見ていたけれど、傑作ってほどじゃなかった。でもそれで充分って気がする。そもそもが「おばさんのお喋りを書きたい」で始まったドラマだし、お喋りってそういうもんだと思うし。その場は楽しくて、連帯感とかあって、なんとなく幸せで、でも内容は薄っぺらくて、二日もすれば思い出せなくなっちゃって、手ざわりとあたたかさだけ残ってるような。だからこれで充分。別の日、神保町にキョンキョンを観にいった。柳家喬太郎桂雀々の二人会。この年末は落語、というか演芸ってほんとすげえなって思わされることが多い。日々をなんとなく過ごしていると、狙いすましたひと言とかではない、なんでもない適当なお喋りに強めのおかしみが宿ってしまうってことが誰にでもあると思う。例えば二人で会話していて絶妙な間で同じ言葉を発するやつとか、なんにも考えずポンと発した言葉が状況に対する絶妙なツッコミとして機能したりしてしまうやつとか、なんかそういうの。ああいうのって意図してないからこその面白さで、意図してやってるとまた別の種類のおかしみになると思うのだけれど、落語ってほんとすごくて、そういう偶然のおかしみを舞台の上で再現してしまう。桂雀々さん、初めて観たのだけれど、凄かった。もうね、ジミー大西。ジミーちゃんのあのおかしみを、舞台の上で違和感なく演じてた。ゲラゲラ笑って神保町でカレーを食べる。欧風カレーは美味しかったけれど、店員さんがやけにつっけんどんだった。さっき笑いすぎたからバランス調整機能が働いてしまったのだろうか。おい、今日のお前はほがらかに過ぎるぞ、もう少し殺伐とせえよ(手元のダイヤルぐるーん)みたいなことかしら。ダイヤル式か。旧型やな。

偶然のおかしみについて、書いてるうちに思い出した話。たぶん中学のころのこと。昼休みにバスケやってて、先輩がボール持ってふざけだして、無意味なシュートフェイクを アホみたいな速さで連続で繰り出し、ピボットというよりダンスのようなステップで無意味なターンを繰り返し、しまいには後ろを向いて背面のゴールにボールを放り投げた。ボールは高い起動の放物線を描き、一度ボードに当たって、ダン、バス、とリングに入った。その瞬間、コートにいた全員が崩れ落ちて爆笑した。ほんとに爆発するように笑った。シュートを打った先輩も含めて、しばらくのあいだ、転げ回って悶絶していた。あれほど笑ったのは後にも先にも、とか書いちゃうとそれは嘘で、笑って立てなくなったことなんてたぶん何度も何度もあると思うのだけれど、記憶に残ってるのはなぜかこれだけ。ボールが空中にあるときのあの静寂、ボードに当たってリングに入るときのあの音、屋外のコートのアスファルトと曇った空のグレーの色まではっきりと覚えている。

あと熊倉献さんの「春と盆暗」が最高だった。とにかく女の子が可愛いし男の子もすげえかわいい。文化系男子女子のボーイ・ミーツ・ガール・ストーリー。しかし1月に出た本を12月に読んで年間最優秀賞だなーなんて思うのなんだか面白いな。

 

春と盆暗 (アフタヌーンKC)

春と盆暗 (アフタヌーンKC)