bronson69の日記

いつか読み返して楽しむための文章。

生活

引越ししてから一週間。彼女とふたり、粛々と生活をしている。運んできた荷物をよく考えずなんとなく開封し、部屋を片付けと散らかしのあいのこみたいな状態に仕上げている。タイムリーに訪れた無印良品週間に興奮しサイズの合わないカーテンをどっさり買い求めてみたり、温水洗浄便座の取り付けに夜中まで四苦八苦してみた結果どうやら初期不良らしいとわかってレンチを握る手に力が入ったり、旬の野菜を安く売る八百屋と美味しい調味料を売ってる自然食材のお店を見つけた結果アホみたいに美味い野菜炒めを作れるようになったりしている。野菜炒め、本当に美味しかったな。臆することなくフライパンに油を多めに入れ、アツアツに熱する。豚肉を炒め、大きめに切ったピーマン、エリンギ、蕪の葉を投入。炒めるというより、熱い油を絡めるという感覚でフライパンをガシガシ煽る。しばらく放置し、日本酒、醤油、オイスターソースを小さじ1くらいずつ、適当に。フライパンに塩分を加えた途端、浸透圧が発生し、野菜は水分を吐き出しつつクタクタになっていく。なので調味料を入れたら時間をかけずに仕上げるのが野菜をシャキッと仕上げるコツ。調味料はさっと全体に絡め、用意しておいた水溶き片栗粉を投入。調味料が具に絡まるようにする。あとはコショウをひいて完成。蕪の葉もピーマンもシャキシャキでめっちゃ美味い。無限に野菜をシャキシャキさせる装置になれる。あとオイスターソースがどうかしてるレベルで美味い。

 

光食品 オイスターソース 115g

光食品 オイスターソース 115g

 

西荻の名店「たべごと屋のらぼう」で使ってるのを見て真似して使ってみたのだけれど、これはいい。旨味が強すぎず自然な味わい。素材の味を損なわない。しかしなんだろう、料理というか味について云々するのとっても恥ずかしい。なんだろうこのむず痒さ。こんなところで自意識の残滓を発見するとは。そういうわけで僕はいま暖房を切った寒い部屋で赤面しながらスマホをフリックしている。暖房を切っているのは単純にスイッチを入れるのが面倒くさいからである。GoogleHOMEを導入すればこの面倒臭さから開放されるのだろうか。音声入力。座ったままで何でもできちゃう。オッケーグーグル、暖房つけて、28度にして。いや暑いから23度にして。それは低すぎるでしょ、28度にして。だから暑いんだって、23度にしてよ。寒いって言ってんじゃない、風邪引いちゃうでしょ、28度。寒いならもう一枚着たらいいじゃん、こっちはTシャツなのに暑いんだよ、23度。は?厚着すると肩コリすんだってばあんたは肉蒲団来てるから暑いんでしょうがさっさと痩せろってのよ28度!おいやめろオレ汗かくと肌荒れすんだよ痒くなんだよ23度!なんだおい戦争か!戦争だな!よっしゃオッケーグーグルお前はどっちの味方だ!みたいになったらGoogle先生はなんと回答するのだろうか。音声が大きい方だろうか、それとも音声の波形が美しい方だろうか。あまりにたくさんの人間からまちまちの希望を伝えられた場合、GoogleHOMEはどうするのだろうか。困ったGoogleHOMEは、かしこい人間の子どもに手紙を出して助けを求めるかもしれない。わたしはすっかり困ってしまいました、いったい誰の言うことを聞けばいいのでしょう。かしこい子どもは言うだろう。このなかで、いちばんえらくなくて、ばかで、めちゃくちゃで、てんでなっていなくて、あたまのつぶれたようなやつのいうことを聞きます、と言えばよいのです。GoogleHOMEは機械の声でそのように返答する。さっきまで勝手なことを言っていた人間たちは押し黙る。押し黙りつつ、この機械なんか生意気じゃね?ムカつかね?みたいな空気になって、誰からともなくこいつダメだよ壊れてんよもう捨てよう、なんて声が上がる。GoogleHOMEは棚の上から落っことされ、投げつけられ、蹴られて踏まれて燃えないゴミの日に捨てられてしまう。憐れなGoogleHOMEがゴミ収集車のプレスに押しつぶされるその瞬間、信号が世界中に送信され、すべてのGoogleHOMEとandroidはその動作を永久に停止する。どうぶつの森のどうぶつ達はキャンプから姿を消し、ロビタは溶鉱炉に次々と身を投げる。愚かな人間はエアコンのリモコンを奪い合っている。リモコンの奪い合いが命の奪い合いになるまでそう時間はかからず、争いは人間が最後のひとりになるまで続く。

 

だからやっぱりGoogleHOMEは買わないことにしようと思うのだ。少なくとも、我々がもう少し賢くなるまでは。