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bronson69の日記

いつか読み返して楽しむための文章。

年度末

忙しい。忙しいって書いた瞬間、忙し自慢するひとってカッコ悪いよね、みたいな第三者目線が頭をもたげてくるわけだけれど、そんな自意識過剰を乗り越えて書いちゃうくらい忙しい。もちろん世の中にはもっと忙しいひとはいくらでもいるのだろうけれど、自分としてはこれだけ忙しかったらもうお腹いっぱいだ。忙しいよー。めんどくさいよー。放りだしてキングコング見に行きたいよー。アサリと菜の花とココナツミルクでカレー作りたいよー。抜け出して公園でビール飲みたいよー。

 

今週のはじめ、こりゃめたくそ忙しくなりそうだぞ、とわかった日に、豚汁を作った。これさえあれば遅くに帰ってきても簡単に温かい食事が出来る。一品で満足できるように、具を盛りだくさんにした。向こう3日くらいこれでしのごうと思い、多めに作った。具を多めに作ろう、量も多めに作ろう、多め×多めだから具を山盛りにしよう。計算の結果、部活の合宿みたいな大鍋いっぱいの豚汁が完成した。

 

それから朝に晩に豚汁を食べ続けている。まだ半分もなくならない。こまめに火を入れているおかげか、傷む気配はまだないのだけれど、それ以前に飽きてきた。ねえこれどうしたらいいと思う、と彼女に相談すると、お前は何を言っているのだ、こういうときはカレールー一択だろう、そんなこともわからないのか、まったくインドカレーばかり作っているからそんなことになるんだ、というありがたいお言葉とため息をつくうさぎのスタンプが送られてきた。

 

もたらされた叡智に感謝の言葉を送り、早速カレールーを買いに行く。しばらく見ないうちに、売り場の半分をフレークタイプのカレールーが占拠していた。チョコレートみたいなタイプのやつは棚の下段に追いやられている。時代の移り変わりを感じつつ、フレークタイプを購入。帰宅して大鍋に放り込む。めっちゃ溶けがいい。またしても叡智。カレーに関わると人はみな賢くなるのだろうか。インド人がゼロの概念を発見したのはカレーのおかげなのではなかろうか。いや、ゼロの概念の発見なんかよりカレーの開発のほうが偉大な功績なのではなかろうか。インド人が賢かったからカレーを編み出したのか、カレーのおかげでインド人が賢くなったのか、そもそもカレーはインド人が開発したものなのか、考えているとわけがわからなくなってくる。あれ、俺の叡智はどこにいったのかな。

 

めでたくカレーになった豚汁を食べる。美味い。味噌の風味は消えているが和風の出汁の香りと旨味は顕在。これあれだ、蕎麦屋だ。蕎麦屋のカレーだ。蕎麦屋カレーを食べながらぼんやりとテレビを見る。こういうときは新しいものじゃなく、すでに見たものがいい。集中力を発揮したくない。カルテットを選んで流す。カルテットを流し見って物凄い贅沢をしてるな、と思う。しかしあれだな、やっぱ真紀さんって怖いな。真紀さんて、どことなくサイコパスっぽい感じがする。クドカンに対する共感性のなさとか、有朱ちゃんの死体を迷いなく遺棄しようとする感じとか。ほんとにサイコパスだ、というわけではなく、そういう資質があるように見える、というくらいだけれども。大事なもののためなら他人の迷惑を顧みない、っていうのかな。ベンジャミンさん追い出したみたいな。するっと万引きできちゃうタイプ。いざとなったら人を殺せる、もしかしたらそれは誰もがそうなのかもしれないけれど、そのハードルが低いタイプの人間。

カルテットで言えば、ヤバい人間はもうひとりいる。言うまでもなく有朱ちゃんである。真紀さんより有朱ちゃんのほうがずーっとサイコパスっぽい。サイコパスって言葉はなんかしっくりこないな、えーと、「言葉が通じないひと」ってほうがいいかな。有朱ちゃんには言葉が届かないし、有朱ちゃんから本当の言葉は出てこない。坂元さんの作品で「言葉が通じないひと」といえば、すぐに思い出すのは「それでも、生きてゆく」の文哉である。坂元さんは「文哉と洋貴の会話のシーン何度も書き直したけれど、幼女を殺すようなやつに届くような言葉を書けなかった、どうしても文哉が変わるとは思えなかった」というようなことをどこかで書いていた。同じことを有朱ちゃんにも感じる。劇中、ついぞ彼女に届く言葉は発せられなかった。

真紀さんがほんとにそういう人間だとして、真紀さんと有朱ちゃんの差はなんなのかな、と思った。言葉が届く真紀さんと、届かない有朱ちゃん。なんだろう。欲求なのかな。あるいは憧れ。有朱ちゃんは金持ちに、成り上がることに憧れた。真紀さんは普通の幸せに憧れた。その違いなのかな。

 

蕎麦屋カレーを食べながら、ぼんやりとそんなことを考えていた。

 

風呂に入って床につく。まだしばらく忙しい日々が続く。普段だらだらしているから、忙しさに慣れていない。多忙をマネジメントするスキルがない。クーリンチェもキングコングもいつ見に行けるやら。桜も咲いてしまうというのに。

ああ。はよ終わらんかなあ。