bronson69の日記

いつか読み返して楽しむための文章。

夢になるといけねぇ

月曜日。

月がとても大きく見えるはずだった日。

 

早々に会社を抜け出し、雨のそぼ降る国立劇場へ。橘蓮二さんという写真家の方の出版記念の会。といってもパーティのようなものではなく、チケットを販売する普通の落語会。出演者の方々と演目はこんな感じ。

 


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一花さん、前座さんなのに(前座さんにしては、ではないですよ)面白かった!正直、落語会の開口一番を務められる前座さんって、やはりこれからの方なので、面白いとは言い難いことが多いのだけれど、一花さんは素直に面白かったです。可愛らしい女性、なのだけれど、ご隠居さんがやけに似合っていた。一朝師匠のお弟子さんとのこと、一朝師匠の育成能力ってなんか凄いですね、何がポイントなんだろう。気になる。

 

松之丞さん、お噂はかねがね、でも眼にしたのは今回がお初。噂通り面白かった。強弱をつけた自虐ネタにゲラゲラ笑わされました。後半、噺に入ってからもとても楽しかったので、侍や忍者の出てくる本格的な講談話も聴いてみたい。軽薄な伝統芸に圧迫されたい。

 

三三師匠、相変わらず綺麗。所作が丁寧で美しく、ほんの少し首を動かすだけの仕草に惹きつけられる。けして美男子ではないと思うのだけれど、やはり色気というのは所作なのだよな。ただしイケメンに限る、なんてことは絶対にないのだ。イケメンとは顔ではないよ、所作だよ所作。

 

遠峰あこさん、この方はまったくのお初。アコーディオンを引きながらの民謡、なんとなくソウル・フラワー・ユニオン、というかヒデ坊を彷彿とさせるものがあった。要するに楽しくって最高ということです。野毛の飲み屋で流しやってます、と仰ってたけど、ヘベレケのときに聴いたらたまらんでしょうね。安い冷酒飲みながら秋田音頭を聴きたいものです。

 

志の輔師匠、本日も凄かった。客席の気を自在に操る。声の大小、緩急、トーン、息づかい、仕草、表情、そのひとつひとつがメロディで、リズムで、そのリズムに乗せられてるうち、気がつくと呼吸を支配されてる。息を詰めて囁くような声に耳をそばだてる、からの急なボケ、揺れるような爆笑。なんて完璧な緊張と緩和。あー、面白かった。

 

落語初体験の彼女が落語を気にいってくれたのもとっても嬉しかった。笑ってる顔が見たくて、噺の最中、何度かちらりと横を向いた。集中を遮らぬように、気づかれないよう、ちらりとだけ。大きな眼をきらきらさせて、頬を紅くして、本当に楽しそうに笑ってて、なんというか、眼福だった。

 

それから飲み屋を二軒はしごして帰路についた。深夜になっても雨は止まなかった。68年ぶりの満月は見られなかったけれど、良いものをたくさん見れた。いい一日だった。