キングオブコント2016
僕はお笑い番組が好きなのだけれど、お笑い芸人のネタを見るのが好きなのかというと、自分でもよくわからなくなる。たぶん、普通に好き、くらい。ライブを追っかけたりはしていないし、ネタ番組（いまだと「そこそこチャップリン」とか？）は録画しているけれど毎回見たりはしない。たぶん漫才やコントより落語のほうが生でみた回数は多い。あ、でも寄席で漫才見てるな。笑組とかホームランとかロケット団とか、面白いですよ。
さて、キングオブコントである。自分が一番好きなお笑い番組のひとつが何を隠そうこの「キングオブコント」で、毎年ワクワクしながらなるべくリアルタイムで視聴していた。どうしても録画のときはネタバレしないように最新の注意を払ってた。怖くてインターネット開けなかったものなー。何がそんなに好きだったのかというと、やっぱりあの芸人だらけのスタジオの空気感だ。準決勝で負けた芸人、勝負のプレッシャーから解放され無責任になっている、でもダウンタウンからいつ振られるかわからないプレッシャーはある、でも基本みんなお祭り感覚でワチャワチャしている、しかしやっぱり舞台の上の「面白さ」には敏感で、シビアで、正直で、面白ければ狂ったように笑うしつまらなければ失笑が聞こえる、演者もそれにのせられてどんどんテンションが上がっていく、あの感じが本当に大好きだった。何ていうんだろね、面白いひとしかいない忘年会に混ぜてもらってるみたいな感じっつったらいいのかなあ。たまらなく魅力的な内輪ノリに混ざってるっていうのかなあ。あの空気の中で、爆発するネタを見るのは、ほんとうに面白かった。１つめのネタですべり倒したコンビが開き直ってやっぱりすべる、その後のコメントで爆笑が起きる、ああいうやり取りが本当に好きだった。そんなこんなを積み重ねて、大爆発したコンビ（トリオもいたね）が説得力ありまくりの優勝をキメるのとかほんとうにほんとうにたまらなかった。東京03、キングオブコメディ、ロバート、バイきんぐ、かもめんたる。みんな堂々たる優勝っぷりだった。最高の番組だった。
去年から審査方法が変わり、スタジオから芸人たちが消え、代わりに審査員が座るようになった。初めての去年は、審査員のコメントに期待するとこもあったのだけど、うーん、正直言ってがっかりだった。妙に優しかったりウケを取りにいったりで、ヌルい雰囲気になってしまった。M1グランプリの審査員のが、トンチンカンであっても真剣にコメントしてたよね。
それに、芸人軍団がいなくなったことの弊害が大きく、番組全体としての笑いの総量は明らかに減ってしまった。ネタ後のひな壇とダウンタウンとのやり取りがなくなっちゃってるわけだから。しかも、ネタとネタの間、今まではひな壇トークで埋めていたものを審査で埋めるわけで、審査して講評してる間は妙にヌルい緊張感が場に出てしまうわけで、だからネタとネタがブツ切れになってしまい、番組のグルーヴも一向に高まらない。客席も温まらない。爆発も起きない。観覧席、今年は何度も悲鳴が起きてましたね。なんなの、観覧席は4DX仕様なの？急に水とか出てきてんの？なんなの？
結果には文句はないです。ライス面白かった。審査に基準がない、と言われがちだけれども、去年と今年を通してみるとなんとなく基準は見えてくる。それは、①その場で爆発的にウケる、②お話に展開がある、③2本のうち片方でもただスベリしてはダメ、こんな感じでしょうか。めっちゃウケれば展開がなくても良いし、そこそこのウケだと展開がないと点数は伸びない。「突飛な設定があり、その設定のなかでベタな展開をやる」みたいなネタには特に厳しい印象がある。去年の巨匠の寿司屋のネタとか、今年でいうとしずるの刑事のネタやななまがりのナスのネタとか。全部すごく笑ったのだけれど、この審査員の基準には合わないよな、そう思ってみてた。かまいたちの監禁ネタもこのパターンなのだけれど、スタジオでウケていたので点数出るかな、と思ったらやっぱりそうだった。ジャングルポケットはそうね、展開もあるしウケてた、でも新しさは感じないしこの感じなら東京03のほうが面白いと思うし、優勝しなくて良かったな、と思ってしまった。ライスは2本とも大好きでした。優勝おめでとうございます。
たぶん芸人審査なら、ななまがりやかもめんたるが2本目に進んだんだろうし、だーりんずはそれでもすべった気がするけれど、ひな壇コメントはここぞとばかりに盛り上がっただろうし、僕が見たかったキングオブコントはやはりそっちで、M1、というかR1ぐらんぷりみたいなヌルい空気感になってる中途半端な競技会を楽しいと思ってるひとはそんなにいないと思うので、TBSの皆様には芸人キャノンボールをゴールデンに流すような蛮勇をいま一度発揮していただいて、従来の方式でのキングオブコントを復活してもらいたいと切に願うわけです。
