bronson69の日記

いつか読み返して楽しむための文章。

僕らが旅に出る理由

僕が旅に出る理由はだいたい百個くらいあって、とはくるりの「ハイウェイ」の歌い出しの一節だけれど、連休最初の土曜日に僕らが旅に出た理由はたったひとつしかなかった。美味しい餃子が食べたかったのである。

 

話は二週間ほど遡る。きっかけは何だったか、それはもう忘れてしまったけれど、彼女とどちらからともなく餃子を食べたいねという話になり、手持ちの美味しい餃子屋の情報を出し合い、しかしいずれのお店も決め手に欠け、そんならもういっそ宇都宮に行こうよ、本場の餃子を食べ歩こうよ、でもけっこう予定つまってるから日帰りね!ということになったのだった。こういうのは思い立ったが吉日、でも我々は吉日にいきなり動けるほどの自由人でもないわけで、その吉日の餃子欲を保つため、餃子情報を調べ続け、でも決して餃子を食べてはならない、そんな感じで禁欲的な二週間を過ごした。

 

まあまあありがちなことだと思うのだけれど、出発の朝、我々はとても眠かった。本来は9時の電車で宇都宮に向かうはずだったのだが、うん、とても眠かった。その日は年間でも有数のおふとん日和だった。おふとんと我々とのシンクロ率は極めて高く、横たわってくるまってとろとろとすやすやとしているだけで幸福な一日を過ごせることは予想に難くなかった。約束された幸福を捨ててまで、我々は餃子を食べに行かなければならないのだろうか?寝ぼけた頭で話し合うが結論は出ない。ねぼけた頭で話し合うからいけないのだ。とりあえずもう少し寝て、冴えた頭で話し合うことにしよう。ではそういうことで、おやすみなさい。

 

結局、出発したのは13時近くなってからだった。そこから在来線のグリーン車で駅弁とビールを飲む。うん、これから食べ歩きに行くのだから駅弁なんぞでお腹を満たすのは間違っている、その通り。そんなことはわかっている。でもさあ、秋のはらこめし弁当も柿の葉寿司も美味しそうだったんだもん。ビールも秋味でさ、9月の連休の出だしとしてはさ、バッチリって感じじゃん?

 

宇都宮に到着したのは15時。我々は満腹の酔っぱらい。でも結果的にこれで正解だった。なんせ一軒目で二時間半も並んだもの。酔っぱらいだから時間の進みも歪んでるし、並んでるだけでも多幸感だし、お腹も膨れてるから不満も出ないし、いいことずくめだった。並んで並んでありついた餃子はもちろん至福。僕には人生ベスト焼き餃子だったし、彼女には人生ベスト水餃子だったらしい。ちなみにお店は「正嗣」の本店です。


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はい。餃子は他にもいろいろ食べたけれど割愛。理由はお察し。その代わりに日光の天然氷にとちおとめ、もといなつおとめのシロップをかけたかき氷と、それからフルーツサンドの写真を載せときます。


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このフルーツサンドがまた人生ベストクラスで美味しかった。いちごの断面、見えてるのは3つですが、この裏側にあと3つずつ入ってる。なんかとちおとめには県をあげて全力投球してるご様子でした。

 

帰りも在来線のグリーン車で快適に移動。在来線のグリーン車が好きすぎて困るくらい好きになってしまった。これに乗るためだけにお出かけしたいくらい。水戸とか熱海とかですかね。熱海いいなあ。ハトヤ泊まってみたいなあ。も少し足を延ばして、さわやかのハンバーグも食べてみたいなあ。

 

いきたいところはたくさんあって、でも部屋で過ごす時間もたいせつで、そうやって毎日は続いてくし、あふれる幸せは続いてく。餃子を食べたくなったり海が見たくなったりしたら旅に出ればいいし、美味しいチョコレートケーキが食べたくなったら伊勢丹の地下のジャンポールエヴァンに行けばいい。何度も食べたくなったなら、何度だって行けばいい。なんとなくアンニュイでなんにもしたくない気分のときは、とにかくふとんの中でこんこんと眠って、おかしな夢の話でもして、話しながら夢うつつになって、起きたまま寝言いってるみたいになってまた眠ろう。僕たちはどうしたって楽しいから、何もしなくたっていいし、何をしたっていいのだ。