bronson69の日記

いつか読み返して楽しむための文章。

TSUTAYAと労働

働いている。いまはTSUTAYAの100円セールでごっそり借りてきたCDを黙々とiTunesに取りこむという労働をこなしている。ものすごく単調な作業。玉ねぎを飴色に炒めるのとタメ張るくらいの単調さ。つまらないけどかといって目を離せないところも似ている。

こういう単純作業を黙々とやっているときはいつも、誰かの下僕になっている自分を想像する。借金のカタか、それとも身分制度か、理由はわからないけれど、逆らうことを許されない状況で、奴隷のように働いている自分。いいんだ、お前は何も知らなくていいし何も考えなくていい、黙って言われたことをやればいい。ただ玉ねぎを炒めろ。何があっても決して手を休めるな。茶色くなるまで木べらで玉ねぎをかき混ぜ続けろ。CDをセットして、ピロンと音がしたら次のCDと交換しろ。それだけやればいい。何も考える必要はない。お前は何も考えるな。何も感じるな。don't think.don't feel.

機械の身体がほしい、と思う。何も考えず、何も感じず、正確な作業をただただ繰り返しつづけるならば、それは人間ではなく機械じゃないか。機械が人間の身体を持っているのはおかしなことだ。だから機械の身体がほしい。俺のカラダの筋肉はどれをとっても機械だぜ、そう言って嘘にならない身体が欲しい。火の鳥に出てくるロビタみたいな可愛らしくて質実剛健な身体がいい。俺がロビタのプロトタイプになって、量産されまくって、世界中で玉ねぎを飴色になるまで炒めたり、iTunesにCDを取り込んだりする。夜は電気羊の夢を見て眠る。ところで電気羊ってなんだろう。「ブレードランナー」なら子供のころに見たのだけれど、電気羊なんて出てきたっけな。床の間のある部屋で親父が隠していたビデオテープを見つけて、これは絶対エッチなやつだ!とワクワクコソコソしながら再生したらエッチなやつではなくブレードランナーだったのだ。いまとなってはうどん屋のシーンしか覚えていない。「二つで充分ですよ」とうどん屋の大将が繰り返すシーン。なんで親父はブレードランナーのビデオテープを隠していたんだろう?ベタ過ぎる趣味が恥ずかしかったのだろうか。もしかしたら、親父もあのビデオをエロいやつだと誤解していたのかもしれない。どうなのかな。いまとなっては真相は藪の中だ。デッカードレプリカントなのかどうかと同じように。

CDの取り込みがようやく終わった。もう眠くてたまらない。眠らなくては。単調な睡眠をとろう。規則正しく握手をしよう。足踏みして踵を三度鳴らそう。目が覚めたら全てが魔法みたいに見えますように。明日のぶんの水出しコーヒーをセットするの忘れてた。もういいや、コーヒーくらいコンビニで買おう。また明日。