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bronson69の日記

いつか読み返して楽しむための文章。

誰かを好きになる瞬間のこと

Twitterでオススメされてた、矢野敏夫監督が撮った笠木忍のビデオを見て、うっかり若いころの恋愛を思い出してしまった。

他のひととこんな話をしたことがないのでもしかしたら自分だけなのかもしれないけれど、僕は過去に誰かを好きになってしまった瞬間のことを、全部、鮮明に覚えている。光の感じ、空気のにおい、女の子のしぐさ、表情、言葉。そういうもののひとつひとつを、ありありと覚えている。好きだと伝えたときのこととか、付き合うことになったときのこととか、別れの場面とか、そういうのはあんまり覚えていなかったりする。ただ、好きになった瞬間のことだけは、忘れようとしても忘れられない。どうしてなんだろう。自分のなかで、神話みたいになってるのかな。

昔のことを思い出したのは、僕が19歳のころに好きになったひとと笠木忍が少し似ていたからだ。もともと友達の友達で、何度か大人数で遊んで仲良くなって、それでうちの大学の学祭に遊びに来てくれたんだったかな。午後に少し手持ち無沙汰な時間ができて、八王子の田舎の大学だったから時間をつぶす場所もなく、なんとなく学生寮の自分の部屋に来ることになった。とにかく狭い部屋で、座る場所はベッドしかなくて、並んで座った。11月の寮の部屋は少し寒くて、ふたりでくっついて毛布をかぶった。で、そのまま、三時間くらい、ずーっとくっついてた。エロいことをするでもなく、ただずーっと座ってた。カーテンの隙間から西日がさして、ホコリがキラキラ光って、くっついてるところが暖かくて、そのまま溶けてしまいそうだった。気持ちいいね、もうしばらくこうしていたいね、そんな会話を何度も何度もした。魔法みたいな時間って本当にあるんだな、そんなことを考えてたし、口にも出したような気がする。

これ、恥ずかしいね。
自分で書いといてなんだけどさ。
なんでこんなの書き始めてしまったんだろう。

とにかく、そういう時間をすごして、部屋から出たときには、その娘のことを好きになってしまってた。もうどうしても黙っていられなくて、その場で好きだと伝えた。彼女も同じ気持ちだったみたいで、すぐに付き合うことになった。

彼女とは、そこから6年間いっしょの時間を過ごした。

今でもたまに、あの日の寮の部屋に流れていた空気のことを思い出す。何度もこのまま消えてなくなってしまうんじゃないかと思った。そのくらい優しくて柔らかな空気だった。自分と彼女、自分と空気との境界線がなくなっていくのを感じていた。あの狭い部屋に詰まっているすべてが僕で、すべてが彼女だった。あんな時間は、あとにも先にも、あの時にしか味わったことがない。もう一度味わいたいとも思わないし、もう一度味わえるとも思わない。あの魔法は、たぶん、たまたまあの時間のあの部屋に座標が合ってしまったんだろうな、と思ってる。惑星直列みたいなもので、ほんとうに偶然に訪れた時間なんだと思う。


昼まで飲んでたお酒がまだ残ってるから、なんか変なものを書いてしまった。
きっと後で恥ずかしくなるんだろうな。
まあいいか、恥の多い人生を送っていこう。