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bronson69の日記

いつか読み返して楽しむための文章。

春はぼんやり

歯医者の予約があるので、きょうは定時で失礼します。
朝からそう宣言して、定時までに仕事を片付け、会社を出た瞬間、自分の中に歯医者に行こうという気持ちがこれっぽっちもないと気づく。
即座に歯医者に電話し、低姿勢で予約をキャンセル。
黙ってバックれたりしないあたりが大人である。
バックレたら次行くとき気まずいもんね。

四谷へ抜ける道を歩く。
坂を下り、坂を登る。
吹く風にはもう冷たさはない。
迎賓館の手前で道を逸れ、遠回りして四谷の桜を見に行くことにする。
四谷の土手の斜面に敷き詰められた満開の桜。
太陽は地平線の下に沈み、薄っすらと残る青い光が桜を染める。
霞のようなブルーグレーの桜並木。
少し度の合わない眼鏡の向こうに、景色がぼやけて浮かぶ。
耳元では眠たそうな声でキリンジが「wake up,wake up」と歌っている。
何もかもが春らしくぼんやりとしていて、それがあんまり心地よくて、次に風が吹いたら桜と一緒に散ってしまいたい、そんなふうに思った。

あとはそのまま帰って酒でも飲んで眠ってしまえばよかったのだけれど、うっかり平野勝之監督の「わくわく不倫旅行」なんぞ再生してしまい、春宵の風情も何もかも吹き飛ばされていまに至る。
パワーあんな、ほんと…