bronson69の日記

いつか読み返して楽しむための文章。

ジョン・ウェイン・ゲイシーの幸せ

年度末。

それなりに遅い時間に帰宅して、簡単に食事を済ませて、シャワーを浴びる。

髪を洗いながら、いつのまにかジョン・ゲイシーのことを考えていた。

 

ジョン・ウェイン・ゲイシー

通称、殺人ピエロ。

アメリカのイリノイ州に生まれ、父親から凄惨な虐待を受けて育つ。

事業家として成功し、街の名士として認められ、高校の同級生と結婚し二児の父となる。

休日には福祉施設を訪れ、子供たちのためポゴって名前のピエロに扮した。

 

彼は異常性愛者だった。

33人の少年を強姦し、殺し、床下に埋めた。

彼の家の床下は腐敗した死体で溢れ、溜まったメタンガスや細菌は捜査員たちを大いに苦しめたという。

 

もっと詳しく知りたいひとがいたらwikiでも見てほしい。

これよりもっと悲惨で非道なエピソードが転がってる。

知れば知るほど胸糞が悪くなる話だ。

 

頭をずぶぬれにしながら、ずーっと考えていた。

ジョン・ゲイシーは、どのように生きるべきだったのか。

殺人鬼ではない、異常性愛者でもない、もっと普通の人間として、幸せになる方法はなかったのか。

 

ゲイシーの心には、きっと暗くて大きな穴が開いていた。

生まれつきだったのか、虐待によって育まれたのか、悪魔にでも憑りつかれたのか。

理由はわからない。

でも理由なんてどうだっていい。理由には興味がない。

 

俺が考えていたのは、キチガイの異常性愛のサイコパスとして育ってしまったゲイシーが、異常性愛のサイコパスのまま、人を殺さず、幸福になるにはどうすればよかったのか?ということだ。

巨大な心の穴を抱えた彼が、心の穴を上手くやり過ごしつつ、家族と、あるいは一人で、幸せに暮らしていくには、どうすればよかったのか。

 

誰か立派なひとが言ってた。

大人になったら、自分の歪みを誰かのせいにしてはいけない。

自分の人格に責任を負わなければいけない。

心の穴を直視して、欠点と向き合って、注意深くならなければいけない。

他人に迷惑をかけないようにしなくてはいけない。

自分の穴埋めのために誰かを利用することがあってはならない。

自律した人間だけが、別の誰かと幸福な関係を築くことができる。

 

正しい。まったくもって正しい。

本当にその通りだと思う。

 

ゲイシーはなんていうだろう。

父親から殴られ続け、「お前は将来カマ野郎になるんだ」呪詛の言葉を浴びせられ、

実際に少年に惹かれていく自分に怯え、男娼を買うようになり。

そんなゲイシーに、同じ言葉をかけられるひとはいるのだろうか?

 

ゲイシーにとって、この「正しい」言葉は、死刑宣告に聞こえるだろう。

本当の自分と向き合い、闇を直視し、そこに見える自分の姿は、異常性愛のゆがんだ男。

ああ、オレは一生、正しくなんかなれないんだな。

オレはオレの責任でオレ自身の歪みを引き受け、ひとりで生きていくしかないんだな。

それが「正しい」対応なんだな。

そんなふうに思うんじゃないか。

 

物心ついたとき、「正しくない」人間になってしまっていたら、そういうひとはどうやって幸せになればいいんだろう。

何度考えてみてもわからない。

 

ブルーハーツでも聞いてれば少しは変わってたのかな。

ロクデナシのための、くそったれの世界のための歌。

終わらない歌を歌おう、くそったれの世界のため

終わらない歌を歌おう、すべての屑どものために。

ライブに行って、優しさに触れて、ポゴダンスでも踊っとけば、殺さないですんだかな。

会場であったかわいい女の子(あるいは男の子)といい仲になって、おっさんなってもライブに通い詰めてたりしてたかな。

そしたら、ピエロの絵も、もっとちゃんとした笑顔になったりしたんだろうか。

 

そんなことを考えながら、ずーっとシャワーを浴びていた。

普通に貯めたら浴槽が一杯溜まるくらいのお湯が流れていった。

自分の幸せはどこにあるんだろう。

心の穴か。

怖くてそんなの見れないよ。

 

あしたは年度初めの日。

朝の電車は初々しさで溢れてるんだろうな。

たくさんのみんなの門出の日だ。

きれいな天気だといいな。

せっかくだから、ねえ。