誰かとどこかで
美味しいものを美味しいと思い、
美しいものを美しいと思う。
わたくしもこの年齢になりましてね、そんなふうに生きていくことが人生の目的なんだと、わたくしもそう思うようになったんですね。
わたくし長いこと、あのー、何が美味しいか、何が美しいか、それを決めるのは自分なんだと、そんなふうに思っておったんですね。
でもですね、この歳になってわかったんですが、あのほんと、この歳になってみてほんとうにまだまだ学ぶことばかりで、お恥ずかしいかぎりなんですが、美味しいもの、美しいもの、それを決めるのは、わたくしではなかったんですね。そのことに気がついたんです。
ではあの、何が美味しいものを決めるのかというと、食べログなんですね。
食べログってご存知ですか?
ご存知ない方のためにご説明いたしますとね、あのー、これはインターネットなんですね。
アドレスというのがございまして、えいち、てぃー、てぃー、ぴー、
「『http://s.tabelog.com』ですね」
はい、ありがとうございます。
インターネットね、お持ちの方、あのー、一般的にはガラケーっていうんでしょうか、わたくしこの言い方すごく嫌いなのでこの番組では電話と呼んでおりますが、この電話からもつながりますのでぜひご覧いただきたいんですけれども、この食べログは、さまざまなお店が出てまいりまして、点数がついているんですね。
この点数で、美味しいお店がわかるようになっていると。
じゃあ、この点数を、誰がつけているのかと申しますと、うどんが主食さん、という方なんですね。
すべてのお店を、このうどんが主食さんが訪れて、お食事をなさって、点数をつけていらっしゃると。
ですから、どのお店にいっても、必ずうどんを召し上がっていらっしゃる。
もとろんあの、フレンチですとかね、タイ料理なんていうのもございますから、必ずどのお店にもうどんがおいてあるわけではございませんで、そうすると、うどんを持参されるわけなんです。
お店にうかがいますと、まずお水をいただきましてですね、うどんを溶かすんですね。
溶けましたら、ザルでこうバッバッと水を切りますでしょ、ですからね、もうテーブルも周りの席の方もビショビショになるんですね。
「ビショビショですか。」
ええもう、梅雨どきの鎌倉のアジサイ、あれと同じような感じですね。
うどんですからね、どうしても、致し方ないんですね。
それであの、お店でおうどんをいただいて、そのおうどんで点数をつけていらっしゃると。
まあそういうような活動をされている方で、その方がおやりになられているインターネット、それが食べログと申しまして、わたくしはもうもっぱらそればかり見ているということなんですね。
ですからもうわたくしはですね、食べログの、うどんが主食さんの、美味しいというものだけを美味しいと思う、そういうことで良いのではないかなと。
「そろそろお時間ですね。」
本日もお付き合いいただき、ありがとうございました、永六輔でした。