さよなら文明
爆風スランプに「さよなら文明」という曲がある。
ヒットソングではなかったけれど、テレビアニメ「ツヨシしっかりしなさい」の主題歌だったから、知っている人も多いかもしれない。
すこしだけ歌詞を書いてみる。
こんな歌だ。
もしもこの世にパンツがなかったら
好きなあの娘に どうして会いに行こう
きっとずっと素直に会いに行ける
もっと分かり会えるよね
おならおならおなら さようなら
文明ぶ文明 さようなら
夏も冬も春も秋でも同じ暮らしじゃ飽きるじゃない
そうさ 僕ら 五臓六腑しみる命さ
引用ここまで。
いい歌詞だと思う。
コミカルだけれど、笑いと照れ隠しの向こうに純情な愛情が見える。
爆風スランプの十八番といっていいスタイルだ。
でもこの曲を聴いて僕が思うのはそういうことじゃない。
もっとずっとかんたんなことだ。
「もしもこの世にパンツがなかったら」
このifに対して適切な問いは、「好きなあの娘」のことじゃないだろう。
そこは、勝新太郎に決まってるだろう。
問われるべき問いは、これだ。
それはやっぱり、ケツの穴だと思うのだ。
たぶん、最近の運び屋がよくやるように、コンドームかなんかにマリファナとコカインを詰めてケツの穴に入れるのだろう。
ここでさらに疑問が生まれる。
誰がコンドームをケツに入れるのか、ということである。
ご存知の通り勝新太郎は肥満体型だ。
「小錦は自分の尻を付き人に拭かせていた」という都市伝説があるように、デブは尻を拭きにくい。
手が届かない、のではない。
厳密に言うと、腹がつかえて体をかがめられないのだ。
もちろん、手段がないわけではない。
ゴロンと転がって、脚をひらいて尻を高く挙げ、いわゆるまんぐりがえしの体制になれば、ひとりで尻をいじくることも不可能ではないだろう。
でも、勝新太郎がそんなことをするだろうか?
あのええかっこしいの勝新太郎が。
否。断じて否。
勝新太郎はそんなことはしない。
誰か。
そんなことは考えるまでも無い。
決まっている。
勝新太郎がケツの穴までさらけ出せる相手。
そんなの最愛の妻である、中村玉緒しかあり得ない。
ここでわれわれはもうひとつの謎にぶち当たる。
勝新は避妊を気にするだろうか。
中村玉緒は避妊を気にするだろうか。
俺には想像できない。
気にするとしてもコンドームじゃないだろう。
コーラで洗う、とかだろう。
理由はない。
だって勝新と玉緒だもん、で充分だ。
きっと、勝新も玉緒も、コンドームなんて触ったことがない。
ここまでの推論をまとめよう。
もしもパンツがなかったら、勝新はケツの穴にドラッグを隠す。
ドラッグはコンドームに包まれる。
勝新と玉緒は、どちらもコンドームなんて使ったこともないはずだ。
となるとどうなるか。
漏れるのだ。
正しい包み方をしなかった、ケツの穴の中のコンドームから、ドラッグが漏れるのだ。
当然、勝新はガンギマリだ。
ヘロヘロのドロドロになるのか、バキバキのビキビキになるのか、そこはわからない。
だが、仮にバキバキだったら。
飛行機の中に、徐々にバキバキになっていく勝新が乗っていたら。
まあ当然、刃物は抜くよね。
スチュワーデスさんの制服切っちゃう、くらいはやりかねないよね。
機長切り捨てて操縦桿握る、くらいまではあり得るよね。
ガンギマリの勝新、飛行機着陸させれんのかなあ。
そもそも着陸しようとするのかなあ。
日本行きの飛行機の、機種をクルリと回転し、アテンション…アテンション…当機はこれより…ニューヨークに向かいます…自由の女神に…キスしに行こうぜ…なんて言い出しそうな気がする。
というか言ってほしい。
想像するだけで超カッコいい。
でもそんなことになったら、これはもう、テロだ。テロリズムだ。早すぎた9.11だ。
たくさんの人が死ぬし、勝新太郎の関わった作品は二度と見られなくなるだろう。
俺はそんな世界は嫌だ。
そんな悲しい世界は嫌だ。
爆風スランプも、俺と同じことを考え、同じ結論に達したんだろう。
考えた末、こんな悲しいもしもを歌にするのは良くない、俺たちは恋の歌を歌おう、ということになったんだろう。
でもやっぱり勝新の名残りは残ってて、それが歌詞の後半になんとなく感じられる。
俺だけかもしれないけど。
もう一度、歌詞の後半のくだりだけ、貼り付けてみる。
読んでみてほしい。
もし、勝新のことを歌っているように感じられたら、それはあなたが俺と同じく狂っていることの証明だと思う。
それじゃ、おやすみ。
おならおならおなら さようなら
文明ぶ文明 さようなら
夏も冬も春も秋でも同じ暮らしじゃ飽きるじゃない
そうさ 僕ら 五臓六腑しみる命さ…