bronson69の日記

いつか読み返して楽しむための文章。

床屋

眠れなくたって朝はくる。
爪は伸びるし髪も伸びる。
いいかげん襟足がおかしなことになってるから床屋でもいくかーと思って自転車置き場に来たはいいけど自転車が無い。
10年愛用のママチャリが無い。
あんな汚え自転車誰が盗むんだ、と首をひねって気がついた。

水曜に飲んだとき、自転車で行ったわ。

夜だから店の前にとめて、しこたま飲んで、タクシーで帰って、そのまま忘れてたわ。
あちゃー。終わった。
確実に鉄板に撤去されてる。
保管料は五千円。
10年選手のママチャリに五千円。
いっそ買うほうが賢いのか。
でもそれってもったいないおばけ出ないか。
もったいないおばけって出てなんか悪いことあんのか。
名前ひらがなだし人当たりソフトっぽいし出てもらっても困らないんじゃないか。
ひとり暮らしさみしくなったら出てもらおっかな。
あと中国人って食事したら礼儀として完食せずにすこし残すらしいけどそれももったいないおばけ出ないか。
中国の人口の半分くらいはもったいないおばけなんじゃないか。
もったいないおばけ大国。中国。

そんなことより脚だ。脚がない。
床屋行くのに脚がない。
俺の家は駅からクソみたいに遠い。
行きつけの床屋は駅からゾウのクソみたいに遠い。
だからウチから床屋まではゾウのクソで大仏ができるくらい遠い。
もちろん手段がないわけじゃない。
タクシー乗ってもいい。金ないけど。
歩いてもいい。だからクソ遠いんだって。
他にもなんかあるだろう。
家の前でボケーッと待ってりゃ流しのゾウ使いが通りかかってアナタノリマスカ?いいの?うわー目線高いねゾウさんの背中ってチクチクするね、なにこれ毛?なんて言ってるうちに床屋の前、みたいな可能性もなくは無い。いや無い。

しかもあの床屋はシステムがおかしい。
まず予約がない。
正確にいうと事前予約がない。
直接店頭に行き、その日の空き時間を確認し、先着順に予約するという謎システムで成り立っている。
近隣住民はいい。ふらりと訪ねて予約してひとまず家に帰ればいい。
俺はそうはいかない。
だから朝イチに行ってそのまま切ってもらう。
そうしないと一日の予定が立たない。
そんなクソシステムにも関わらず通うには理由がある。
単純に腕が良くて安いのだ。
朝から並ぶ価値がある。築地市場の寿司屋みたいな感じ。

やっと背景説明が済んだけど、要するに自転車がないと髪が切れないのだ。終了。

諦めて家に帰る。
台所で歯を磨く。
午後イチで歯医者の予約があるのだ。
歯ブラシを終えてフロスをする。
快調に歯の隙間をキレイにしてたら、差し歯が取れた。
取れた歯は、そのまま下水に消えていった。

彼女、自転車、そんで、歯。
なんだこれ。
なんかの祟りか。
次は何がなくなるんだ。
職か。金か。命か。
もうほんと、勘弁してよ。
これがもったいないおばけの祟りなのか。
ちゃんと自転車ひきとりにいくから、助けて、もったいないおばけ。